
平面や溝、ポケット形状をもつ金属部品を見て、「これはフライス加工でつくられている」とわかっても、いざ発注するとなると「どの工具で、どんな方式で削るのか」までは見えにくいものです。フライス加工は、回転する刃物で多彩な形状を生み出せる柔軟な加工法ですが、その分だけ工具と方式の選択肢が広いのが特徴です。
この記事では、フライス加工とは何かという基本から、正面フライス・エンドミルなどの方式と工具の種類、アップカットとダウンカットの違い、設計・発注時に押さえたい注意点までを、精密切削加工メーカーの視点で解説します。
1. フライス加工とは|回転する多刃工具で削る「転削」加工
フライス加工とは、外周や底面に複数の切れ刃をもつ回転工具「フライス」を使い、固定した工作物の不要部分を削り取る切削加工です。用語を定めたJIS B 0106でも、フライス削りは「フライスを用いて工作物の不要な部分を除去する切削」と定義されています。
旋盤加工が「工作物を回して固定した刃物を当てる」のに対し、フライス加工は「刃物を回して固定した工作物を削る」点が根本的に異なります。両者の違いそのものは旋盤加工・フライス盤加工の基礎と応用で詳しく解説していますので、本記事では「フライス加工の種類と用途」に絞って掘り下げます。
2. フライス加工でできる加工形状
フライス加工は、回転工具と3軸(あるいはそれ以上)の送りを組み合わせることで、次のような多様な形状をつくれます。
- 平面・段差(フェイス加工)
- 側面・輪郭(コンタリング)
- 溝・スリット・キー溝
- ポケット(凹み)形状
- 曲面・3次元形状
- C面取り・座ぐり
回転対称でない複雑形状を得意とするのがフライス加工の強みです。これらの形状は、加工する部位や精度に応じて工具と方式を使い分けます。
3. フライス加工の方式と工具の種類
フライス加工は、使う工具によって方式が分かれます。代表的なものを整理します。

| 工具・方式 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 正面フライス(フェイスミル) | 円周に複数の交換チップ。広い平面を効率よく平滑に削る | 大きな平面の荒〜仕上げ |
| エンドミル | 外周と底面に切れ刃をもつ万能工具 | 側面・溝・ポケット・輪郭 |
| 側フライス・角フライス | 円盤状で側面・両側に刃 | 溝・側面(横フライス盤) |
| メタルソー(スリワリフライス) | 薄い円盤状の刃 | 細い溝・スリット・切断 |
| Tスロットカッター等 | T溝など特殊断面用 | 専用形状の溝 |
エンドミルの底刃形状(スクエア・ボール・ラジアス)
エンドミルは底刃の形状でさらに分かれます。スクエア(直角の平面・溝・肩削り)、ボール(曲面・3次元形状)、ラジアス(コーナにRを付け荒〜仕上げや難削材に強い)が基本です。加えて、外周刃を波状にして切りくずを分断し大きな切込みを可能にするラフィングエンドミルなどもあります。
4. アップカットとダウンカットの違いと使い分け
フライス加工では、工具の回転方向と工作物の送り方向の関係で、削り方が2つに分かれます。これは仕上げ面や工具寿命に直結する重要なポイントです。
| 項目 | アップカット(上向き削り) | ダウンカット(下向き削り) |
|---|---|---|
| 回転と送りの向き | 反対 | 同じ |
| 切削抵抗 | 大きい | 小さい |
| 工具寿命 | 短くなりやすい | 長くなりやすい |
| びびり | 生じやすい | 生じにくい |
| 適した機械 | 汎用フライス盤・加工硬化材 | NC機(バックラッシ対策が前提) |
JIS B 0106では、上向き削り(アップカット)は「フライスの回転切削運動の向きと工作物の送りの向きとが反対」、下向き削り(ダウンカット)は「同じ」と定義されています。一般にはダウンカットが工具にやさしく推奨されますが、送りねじにガタ(バックラッシ)のある汎用機ではアップカットが安全な場合もあり、機械と材料に応じて使い分けます。
5. フライス工具の材種|ハイスと超硬の使い分け
フライス工具の材種は、大きくハイス(高速度工具鋼)と超硬合金に分かれます。ハイスは粘り強く欠けにくいため複雑形状の工具や低剛性の加工に向き、超硬は高価ながら切削速度・耐摩耗性・精度に優れ、被削材の対応幅も広いのが特徴です。被削材や要求精度に応じて、コーティングの有無も含めて選定します。
6. フライス盤・マシニングセンタの種類(概観)
フライス加工を行う機械には、主軸が縦の立フライス盤、横の横フライス盤、手動の汎用機、数値制御のNCフライス盤、工具を自動交換できるマシニングセンタなどがあります。機械ごとの詳しい比較は旋盤加工とマシニングセンタの違いを、両頭フライス盤については両頭フライス盤とはをご覧ください。
7. フライス加工の苦手な形状と設計・発注時の注意
フライス加工には、工具形状に由来する苦手な形状や設計上の制約があります。図面段階で押さえておくと、加工性とコストが大きく改善します。

- 内側の直角(ピン角)は作れない:工具が円形のため、ポケットや溝の隅には必ずR(隅R)が残る。隅Rはエンドミル径で決まる
- 突き出しが長いとびびる:深い加工ほど工具がたわみ精度が落ちる。隅Rを大きくして径の太い工具を使えるようにすると安定する(突き出し量÷工具径は5以下が目安)
- 薄肉部は変形しやすい:残留応力・クランプ力・切削熱で反りやすい。肉厚や加工順序の工夫が必要
- 適切な取り代を残す:荒加工と仕上げ加工を分けることで、精度と面粗さを確保しやすい
隅Rの寸法を「機能上問題ない範囲で大きめに」指定いただけると、太く短い工具が使え、加工時間の短縮と精度向上の両立につながります。図面でお悩みの場合は、内容にもよりますがまずはご相談ください。
関連コラム
あわせて、加工方法や材質の選定にお役立ていただける関連コラム・加工事例もご覧ください。
- 旋盤加工とフライス盤加工の基礎と応用|精密機械部品製造の現場から
- 両頭フライス盤とは?仕組み・特徴・加工事例を徹底解説
- 旋盤加工とマシニングセンタの違い|使い分けの判断軸と外注選定ガイド
- 金属部品加工の種類ガイド|旋盤・フライス・研削の使い分けを解説
フライス加工のご相談はヨシダセイコーへ
ヨシダセイコーは1952年創業、石川県金沢市の精密切削加工メーカーです。マシニングセンタ約10台に加え、ブラザー SPEEDIO R450X2 や TSUGAMI FMA5-Ⅲ(5面加工機)などを保有し、平面・溝・ポケット・曲面まで幅広いフライス加工に対応します。NC旋盤約60台・測定機器1,100点以上の体制で、旋削との複合加工も含めて一貫対応が可能です。ISO9001:2015/ISO14001取得。設備の詳細は設備紹介ページをご覧ください。
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